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「御用聞き」の意味と語源
読み方
ごようきき
意味
①官府の命を受けて公用を弁ずる人。特に町人などで、官命を受けて十手取縄をあずかり、犯人を探偵逮捕に当たった者。
②得意先などに注文を聞きにまわること。また、その商人。
※広辞苑(岩波書店 第7版)より
顧客の要望を聞き、それに応じた商品やサービスを提供する役割のことを指します。
もともとは江戸時代の商習慣に由来し、特に町の商人や職人が、武家や裕福な家の要望を聞いて商品を届けたり、必要なものを手配したりする職業でした。
サザエさんの三郎さんのように、各家庭を訪問して注文を聞いて回っている人と言えばわかりやすいですね。
現代では、顧客の意見を聞き入れる営業職や販売員に対しても「御用聞き」という言葉が使われることがありますが、単なる注文を取るだけでなく、顧客のニーズを把握して適切な提案をすることが求められます。
ちょっと豆知識
①の「官命を受けて十手取縄をあずかり、犯人を探偵逮捕に当たった者」とは、江戸時代の岡っ引き(おかっぴき)のこと。
岡っ引きは、町人の身分ながら、奉行所の仕事を手伝い、情報収集や犯人逮捕などを担当していました。
「御用聞き」という言葉にはもともと「お上(幕府や役所)の要望を聞いて対応する人」という意味があります。
岡っ引きも「お上の御用(犯人捜しや治安維持)」を請け負っていたため、「御用聞き」と呼ばれることがあったと考えられます。
語源
「御用(ごよう)」は「用事」や「必要なこと」を意味し、「聞き(きき)」はそのまま「聞く」ことを指します。
なので、「相手の用事を聞いて対応する人」=「御用聞き」という言葉になります。
「御用達」の意味と語源
読み方
ごようたし
(ごようたつ、ごようだち とも言う)
意味
御用商人に同じ。
[御用商人]
①江戸時代、幕府・諸藩に出入りを許され、商品を納め、また金銭の調達などを周旋した、特権的な商人。御用達。
②許可を得て、宮中または官庁の用品を納めることを業とする商人。御用達。
※広辞苑(岩波書店 第7版)より
特定の顧客(特に宮中や政府機関、企業など)に継続的に商品やサービスを提供する業者やその商品を指します。
特に「○○御用達」といった形で、格式の高い顧客に認められた店舗やブランドを示す言葉として使われることが多いです。
「銀座のマダム御用達」「プロアスリート御用達」など、現代では「特定の層に愛用されている」ことを示すキャッチコピーとしても使われます。
本来の意味から派生して、マーケティング戦略の一環になっているんですね。
江戸時代には幕府や大名家に仕える商人が「御用達」と呼ばれ、武家などの御用を承る特別な地位を持っていました。
ちょっと豆知識
宮内庁が厳正な審査ののち、商品の納入の認可を受けた業者を「宮内庁御用達」と読んでいますが、現在、「宮内庁御用達」は正式には存在しません。
かつては宮内庁が特定の業者に「宮内庁御用達」の称号を与えていましたが、戦後の制度改正により、この制度は廃止されました。
語源
「御用」は「必要なこと」、「達(たし)」は「達する(届ける)」の意味を持ちます。
なので、「必要なものを届けること」や「特定の顧客に商品を納めること」=「御用達」と言う言葉になります。
「御用聞き」と「御用達」の違い
「御用聞き」と「御用達」は似たような印象を受けるかもしれませんが、以下のような違いがあります。
御用聞き | 御用達 | |
---|---|---|
意味 | 顧客の要望を聞いて対応する人や行為 | 特定の顧客に継続的に商品を提供することや業者 |
立場 | 顧客の声を聞いて商品やサービスを手配する | 既に特定の顧客に選ばれて商品を納める |
語源 | 「御用(用事)」+「聞く」 | 「御用(用事)」+「達する(届ける)」 |
「御用聞き」は、顧客の要望を聞いて商品を提供する活動そのものを指すのに対し、「御用達」は、特定の顧客に認められた業者や商品を指す点が大きな違いです。
まとめ
「御用聞き」と「御用達」はどちらも顧客と密接に関わる言葉ですが、それぞれ異なる役割を持ちます。
- 「御用聞き」は「顧客の要望を聞いて対応する」行為や人のこと。
- 「御用達」は「特定の顧客に継続的に商品を納める」業者やブランドのこと。
- 語源からも「聞く」と「届ける」という違いがあり、御用聞きはお客様の声に耳を傾ける立場、御用達はすでに特定の顧客に認められている立場。
この違いを理解することで、歴史的な背景や現代の使われ方もより明確になります。
「御用聞きの姿勢を大切にしながら、いずれは御用達のような信頼を得る」という視点も、ビジネスにおいて参考になるかもしれませんね!