ジューンブライドとは「6月の花嫁」を意味し、6月に結婚すると幸せになれるという言い伝えです。
この風習は日本でも広く知られており、毎年6月には多くのカップルが結婚式を挙げています。
この記事では、ジューンブライドの由来や背景、そして世界各国の結婚にまつわる文化や風習を紹介します。
6月の結婚式にまつわる魅力を、ぜひ再発見してみてください。
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ジューンブライドの由来・起源
ジューンブライドの起源は、古代ローマ時代にさかのぼります。
6月は結婚・出産・家庭の女神「ユーノー(Juno)」に守られている月とされており、その加護を受けられることから、6月の結婚は縁起が良いと考えられてきました。
また中世ヨーロッパでは、農作業の忙しい時期を避け、比較的ゆとりのある6月に結婚式を挙げることが一般的でした。
さらに、冬の間に制限されていた結婚式の解禁時期とも重なるため、6月は「結婚に最適な季節」として定着していきます。
なぜ冬に結婚式が制限されていたのか?
中世ヨーロッパでは、冬の間に結婚式を挙げることは控えるべきとされていました。
理由のひとつは、アドベント(クリスマス前)や四旬節(イースター前)といったキリスト教の重要な宗教行事が冬から春にかけて続き、祝宴を避けるべき期間とされていたためです。
もうひとつは、厳しい寒さや交通事情の悪化によって、結婚式に人を集めたり、食材や衣装をそろえたりするのが困難だったからです。
そのため、暖かくなり、宗教的な制約も少ない6月が選ばれるようになったのです。
日本のジューンブライド
「ジューンブライド」という言葉が日本に広まったのは、昭和40年代(1960〜70年代)ごろのことです。
当時の日本では、梅雨の影響で天候が不安定になる6月は結婚式のオフシーズンとされており、式場やホテル業界にとっては集客の課題がありました。
そこで注目されたのが、ヨーロッパの「ジューンブライド」伝説。
「6月に結婚した花嫁は幸せになれる」というロマンチックなフレーズを、日本のブライダル業界がキャッチコピーとして広告に活用し始めたのです。
カタカナ語の響きの美しさも手伝い、雑誌やテレビCM、百貨店のブライダルフェアなどで盛んに使われるようになりました。
当時は結婚が家と家の結びつきとされる時代から、個人の愛情を重視する風潮へと移行していた時期でもあり、ジューンブライドの「幸せを願うロマンチックな結婚」のイメージが、特に若い女性を中心に共感を集めました。
また、6月は気候的には雨が多いものの、花々が美しい季節でもあります。
あじさいや新緑など、梅雨ならではの風情を活かした結婚式の演出も徐々に人気を集め、現在では6月の結婚式は「しっとりとした美しさ」「季節感のある式」として定着しています。

世界各国の結婚にまつわる文化・風習
結婚にまつわる風習や意味合いは、国や地域によって実にさまざまです。
ここでは代表的な国の結婚文化をいくつか紹介します。
イギリス:格式と伝統を大切にするブリティッシュ・ウェディング
イギリスの結婚式は、伝統と格式を重んじながらも、新郎新婦の個性や家族との絆を大切にするスタイルが特徴です。
今でも多くのカップルが、歴史ある教会での厳かな教会式を選んでおり、格式高い雰囲気の中で愛を誓います。
また、イギリスでは結婚式当日に「Something Four」という、幸運を願う伝統的な慣習も広く親しまれています。
これは花嫁が次の4つのものを身につけると幸せになれるというおまじないで、
- Something Old (何か古いもの)
- Something New (何か新しいもの)
- Something Borrowed (何か借りたもの)
- Something Blue (何か青いもの)
を当日に取り入れるというものです。
この習わしは19世紀のヴィクトリア朝時代に広まり、今では世界中に影響を与えるブライダル文化のひとつとなっています。
披露宴では、英国らしいアフタヌーンティー形式のパーティや、フルーツケーキを使った多層のウェディングケーキなどが登場するのも特徴です。
また、ゲストの女性は帽子(ファシネーター)をかぶるなど、服装にもエレガントな気配りが求められます。
イギリスの結婚式は、王室の影響もあり伝統を大切にしながらも華やかで気品ある雰囲気が魅力で、映画やドラマなどでもよく描かれる“憧れの結婚式”の一つとなっています。
イギリスとジューンブライド
イギリスでは、古くから結婚の女神・ユーノー(Juno)にちなんで「6月に結婚すると幸せになれる」という言い伝えがありました。
また、イギリスでは農作業がひと段落する時期でもあり、結婚式が現実的に行いやすかったという背景もあります。現代でも「ジューンブライド」は浸透しており、6月の結婚式にはロマンチックなイメージが残っています。
インド:色鮮やかな結婚式と数日にわたるお祝い
インドの結婚式はとにかく華やかで長いのが特徴です。
挙式前から複数日(1週間前後、長いと1ヶ月にもなる)にわたってさまざまな儀式が行われ、家族や親族が総出で準備・お祝いをします。
代表的な儀式のひとつが「メヘンディ」で、花嫁の手足に美しいヘナ模様が描かれます。
これは魔除けや繁栄を願うものです。
花嫁の衣装には、赤やゴールドなど鮮やかな色が使われるのが一般的で、細かく刺繍が施されたサリーやレヘンガを身に着けます。
花婿も煌びやかな民族衣装をまとい、馬に乗って登場する伝統を守っている地域もあります。
結婚式はまさに「人生最大のイベント」であり、料理、音楽、ダンス、儀式が融合した豪華なパーティのような雰囲気です。
インドとジューンブライド
インドでは「ジューンブライド」という言葉はほとんど使われません。
代わりに、結婚の日取りはヒンドゥー教の暦に従い、占星術で選ばれた「吉日」に挙げるのが一般的です。
また、インドの6月はモンスーン(雨季)の始まりにあたるため、屋外の結婚式には不向きな季節とされることもあります。
そのため、結婚式は乾季に集中する傾向があり、ジューンブライドという西洋的な概念は根付いていません。
中国:吉日選びと「赤」を中心とした伝統婚
中国では結婚式において、「日取り(吉日)」がとても重視されます。
結婚式に最もふさわしい日を選ぶため、伝統的に風水や占い師のアドバイスを受けるのが一般的です。
この吉日は、家族の繁栄や夫婦の幸福を左右する大切な要素とされます。
また、中国の結婚式といえば「赤」。
赤は幸福・繁栄・愛情を象徴する色とされ、花嫁は「チーパオ(旗袍)」や「クワ(褂)」と呼ばれる赤いドレスを着用します。
結婚式場の装飾も赤一色で統一されることが多く、招待状やお祝いの封筒(紅包)などもすべて赤です。
結婚式では「お茶を差し出す儀式(茶敬)」など、家族への敬意を示す伝統的な儀式が今でも大切に守られています。
中国とジューンブライド
中国では、結婚にまつわる風習として「吉日選び」が非常に重要視されます。
伝統的な暦や風水を参考に、家族や占い師と相談して縁起の良い日取りを決めるのが一般的です。
そのため、「ジューンブライド」のような月単位のイメージはあまり浸透していません。
ただし、都市部では欧米の文化を取り入れたウェディングスタイルも増えており、一部の若者の間ではジューンブライドという言葉も知られるようになってきています。
フランス:格式と美食のウェディング文化
フランスの結婚式は、優雅さと美食がテーマです。
教会での厳かな挙式の後、シャトー(お城)や古い邸宅でレセプションを開くのが憧れのスタイルとされています。
会場の選定や装飾は非常に凝っていて、花やキャンドル、クラシカルな家具でヨーロッパらしい雰囲気が演出されます。
フランスでは、結婚式の料理やデザートにもこだわりがあります。
中でも有名なのが、クロカンブッシュという伝統的なウェディングケーキ。
これはシュークリームをタワー状に積み上げた豪華なケーキで、キャラメルで接着され、見た目にも華やか。
新郎新婦がこのケーキにナイフを入れるのが披露宴のハイライトになります。
また、ゲストには「ドラジェ」と呼ばれる砂糖がけアーモンドを贈るのが定番。
一般的には5粒入りで、「幸福・健康・富・長寿・実り」を象徴するとされます。
小さなサテン袋やガラス瓶に入れて渡すその習慣は、日本の引き出物文化にも近く、感謝の気持ちを伝える大切な演出となっています。
フランスとジューンブライド
フランスでは「ジューンブライド」という言葉自体はあまり使われませんが、6月は天候がよく、バカンスシーズン前の安定した時期ということもあり、結婚式に選ばれることの多い月です。
ガーデンウェディングやシャトーでの挙式など、スタイリッシュで個性的な演出が好まれており、ジューンブライドというよりは、6月の美しい自然環境を活かした式が主流です。
韓国:伝統儀礼「ペベク」と現代式の融合
韓国の結婚式では、現代的なセレモニーと、家族への敬意を示す伝統的な儀式「ペベク」の両方が行われることがあります。
ペベクでは、花嫁花婿が両親の前で跪き、お茶を差し出したり、栗やナツメを投げて将来の子どもの数を占ったりします。
衣装には、色とりどりの「韓服(ハンボク)」が用いられます。
女性は鮮やかなチマチョゴリ、男性は伝統的なパジとチョゴリを着て、写真撮影でも美しいビジュアルを演出します。
近年では、ペベク用の専用スペースを備えた式場も増えており、伝統とモダンが調和した韓国独自の婚礼スタイルが定着しています。
韓国とジューンブライド
韓国でも、6月に結婚式を挙げることは一般的ですが、「ジューンブライド」という表現そのものはあまり定着していません。
結婚式のハイシーズンは5~6月と10月であり、気候的にも快適な時期として6月は人気があります。
最近では西洋式のチャペルウェディングや写真重視の演出が多く取り入れられ、若いカップルの中にはジューンブライドという響きに惹かれて6月を選ぶ人も増えてきています。
まとめ
ジューンブライドは、古代ローマ時代から続く「6月の結婚は幸せをもたらす」という言い伝えに基づいた、西洋発祥のロマンチックな風習です。
6月に結婚することで、良い未来が約束されると信じられてきました。
近年では、この考え方はイギリスをはじめとする欧米諸国で今も根強く残っています。
一方、インドや中国のように伝統や宗教、暦に重きを置く文化圏では、ジューンブライドの概念は浸透していない国もあります。
このように、ジューンブライドは国ごとに捉え方や背景が異なりますが、6月という季節に結婚式を挙げることが、多くの人にとって希望に満ちた門出となっているのは共通しています。
ジューンブライドを迎えることは、新たな人生のスタートを祝う、世界中で愛される美しい習慣のひとつです。