「役不足」「力不足」「役者不足」。
よく似た言葉ですね。
これらは、一体、何が何に対して不足しているのでしょうか。
役不足の意味・使い方
「役不足」とは、俳優などが与えられた役に満足しないことで、一般的には、能力に対して役目が軽すぎることを言います。
与えられた役目・ポスト・仕事が、その人の能力に比べたら軽すぎるという不満の気持ちを表す表現です。
「私はこの仕事には、役不足ですが、やらせていただきます」と、へりくだる気持ちで言う人がいますが、それは誤りです。
しかし、間違って使っている人は多いのです。
文化庁の「国語に関する世論調査」(平成24年度)では、「彼には役不足の仕事だ」の意味を尋ねています。
○本人の力量に対して役目が軽い…41.6%。
×本人の力量に対して役目が重い…51.0%。
と、誤りの意味で理解している人の方が多くなっています。
力不足の意味・使い方
「力不足」とは与えられた仕事や役目を果たす能力がないことです。
「役不足」の反対の意味といえます。
力不足は役不足の反対語?
あらためて確認しておきましょう。
「力不足」は、与えられた役割に対して、自分の能力が足りないこと。
「未熟」「荷が重い」「実力不足」という表現で言い換えることもできます。
力量不足を素直に認めて使う場合も、自分の力を謙遜して使うこともあります。
「役不足」は、自分の能力に対して、与えられた役割が軽すぎること。
力量ある相手に、軽い役目を果たしてもらうことを詫びるような時に使うか、自分に与えられた役目が簡単で、物足りないと感じた時に不満を伝えるような場面で使います。
例:田舎の小学校の教師なんて、東大卒の私には役不足だと、最初は思いました。
役者不足の意味・使い方
「役者不足」は、辞書にはない造語です。
意味を考えるなら、文字通り「役者」の数が足りない状況だと解釈するしかありません。
しかし、「役不足」と混同されたり、逆に「役不足」の反対語として用いられたりすることもあります。
造語ですので、使わない方がよいでしょう。
役不足・力不足・役者不足の違い
いつもは主役をやっているような大女優が、通行人役を命じられたら、これは「役不足」。
実力のない新人女優が、大河ドラマの主役に抜擢されたら、「力不足」。
「役者不足」という言葉は使わない方がいいと思いますが、強いて使うなら、ドラマに出演する役者の数がそろわない、役者が足りない、というような意味になります。
まとめ
- 「役不足」は、自分の能力に対して、与えられた役割が軽すぎること。
- 「力不足」は、与えられた役割に対して、自分の能力が足りないことこと。
「私は、その仕事には力不足ですが、一生懸命いたします」と言うべきところで「私には役不足ですが…」と言ってしまったら、笑われても仕方ありません。
逆に、相手に対して、「この仕事は力不足でしょうが、よろしくお願いします」なんて言ってしまったら、大変に失礼です。
気をつけたいものですね。