「押す」、「推す」。
同じ読み方をする2つの漢字ですが、違いは何なのでしょうか?
それぞれの漢字の正しい意味と使い分けを調べてみました。
▼目次(クリックで見出しへジャンプ)
押すの意味・使い方
押すの意味は、「物事を動かそうと力を加えること」だそうです。
使い方としては、「故障した車を手で押す」というような使い方が正しいことになりますね。
物理的に何かを動かすのではなく、今ある状況を強引に前に進める際にも用いるようです。
「病気を押して出席する」といった具合です。
また「願望や要求を通すため相手にプレッシャーをかける」という意味でも使われるようです。
例えば「値上げを阻止するため、あの手この手で押す」といった表現があります。
押すは他にも以下のように使われます。
例:熱意に押されて承認する
例:念を押す
例:責任を押しつける
推す意味・使い方
推すの意味は、「ある状態から前に進めること」だそうです。
これだけだとイメージしにくいので、もう少し具体的に言えば「①人に薦める」「②おしはかる」「③突き詰める」という3つの意味で用いられるようです。
使い方としては、「前者の作品を大賞に推す」というような使い方になりますね(これは①の意味)。
例:推して知るべし(②)
例:計画を推し進める(③)
押す・推すの違いは?
さて、ここまで2つの漢字の意味と使い方を見てきました。
それぞれの違いについて整理していきたいと思います。
まず注目したいのは両者とも「何かに力を加える」とういう意味を含んでいる点です。
実は「押す」も「推す」も語源は同じで、「手で力を加えるさま」からできた漢字なのです。
両方とも部首は「扌(てへん)」ですし、同じ語源というのもうなずけますね。
その後時代を経る中で少しずつ使われる場面が決まっていったようです。
なので違いはコレですと一言で表すは難しいのですが、自分なりに整理してみました。
改めてそれぞれの例文をいくつかみてみます。
車を押す。
念を押す。
熱意に押される。
責任を押しつける。
作品を大賞に推す。
部長に推す。
推して知るべし。
計画を推し進める。
動かす対象が触れることのできる物体・人の場合は「押す」を使うようです。
一方で動かす対象が物体や人以外の場合は使い分けが必要になります。
大まかに言ってしまえば、使い分けは以下のようになります。
- 押す:強制力を持って圧力をかける
- 推す:物事をプラスの方向へ進展・拡大させる
アイドルを「おす」という文章の場合は、
・好きで応援している場合は「推す」
・物理的に動かす場合は「押す」
を使います。
ただし、「アイドルを推す」という言葉は最近出来た用語のようなので、日本語として正しいかは難しいところですが…。
ちなみに、「推す」は熟語になると物体を動かす意味で使われることがあります。
代表的な例は「推敲(すいこう)」です。
詩や文章を何度もねりなおすこと意味していますが、古代中国の詩人が「僧は推す月下の門」という詩を作る際に、「推」(物理的に門をおす)という字を使うか「敲(たたく)」という字を使うか思い悩んだという故事から生まれた言葉です。
語源は同じということを感じさせられますね。
まとめ
それでは今回調べたことをまとめます。
- 押す・推すともに「何かに力を加える」という意味を持つ点で共通している。
- 動かす対象が触れることのできる物・人である場合は「押す」を使う。
- それ以外の場合、強制力を持って圧力をかける場合は「押す」を使う。
- 物事をプラスの方向へ進展・拡大させる場合は「推す」を使う。
いかがだったでしょうか。
語源が同じだけあって、言葉で表すと「押す」と「推す」の違いはちょっと難しい感じがしますね。
基本は「押す」を使うことが多いが、「①人に薦める」「②おしはかる」「③突き詰める」という意味の場合は「推す」を使うと覚えてもいいかもしれません。