「うかがう」を漢字で書く時には、「伺う」「窺う」「覗う」の三つが考えられます。
「なんだか、見慣れない字もあるなあ」と、思われたアナタ!
その通りです。
「窺う」もそうですけれども、特に「覗う」は、あまり目にしませんね。
でも、それには、ちゃんと理由があるんです!
『窺う』『覗う』をあまり見ない理由、それは、後半で述べることにします。
さて、この三つの「うかがう」の漢字には、一つの共通点がありました。
それは「穴」。
え? 穴?
そう、あな、hole、です。
いったいどういうことなのでしょうか。
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伺うの意味・使い方
「伺」という漢字は、部首「人」と、穴を意味する「司」の組み合わせでできたもの。
もともとは、穴を通してのぞくという動作を示しています。
ただし、現在では、「聞く」「尋ねる」「訪問する」の謙譲語として使われています。
例:お名前を伺ってよろしいですか。(「尋ねる」の謙譲語)
例:明日、お宅に伺ってもよろしいでしょうか。(「訪問する」の謙譲語)
また、「お伺いを立てる」のように、神や仏のお告げを聞くという用法もあります。
どうも、「伺」という漢字には、へりくだって、立場が上の人の機嫌を気にするようなイメージがありますね。
窺うの意味・使い方
「窺」という漢字は、部首「穴」と「規」を組み合わせてできたもの。
「こっそりとのぞく」という意味です。
「そっと様子をみる」「状況を察する」という使われ方をします。
「窺」の部首は「穴」(あなかんむり)で、「ウ」(うかんむり)ではありません。
(ついでに言うと「空」も「究」も「穴」が部首です。)
「規」は「キ」という音を表していますが、「コンパスではかる」という意味も持っています。
穴からのぞいて、何がおこるかきっちり見届ける、というわけでしょうか。
覗うの意味・使い方
「覗」は、部首「見」と穴を意味する「司」を組み合わせてできたもの。
穴を通して中を見ようとすることで、意味・使われ方は「窺う」と同じです。
辞書の中には、「窺う」の項目で、「『覗う』と書かれることもある」と説明しているものもあるくらい、「窺う」と「覗う」の用法は近いのです。
うかがう?のぞく?
ですが、実際には、「覗」を、「うかがう」として使用するケースは、それほど多くはありません。
私が持っている携帯電話のメールの変換予測候補には「伺う」と「窺う」は出てきますが、「覗う」は出てきません。
(さすがに、Wordなどのパソコン用の文書作成ソフトで変換すると、「覗う」は表示されますけども。)
「覗」は、どちらかというと「のぞく」という読み方で使われることの方が多いのです。
例:葦の髄から天井を覗く。(よしのずいからてんじょうをのぞく。)
うーん、ここでも「穴」関連の意味ですね。(笑)
伺う・窺う・覗うの違いは?
どれも、漢字そのものの意味は「狭い穴からのぞく」というものです。
しかし、使われ方には違いがあります。
「伺う」は「聞く」「尋ねる」「訪問する」の謙譲語として使われることが一般的です。
それに対し「窺う」「覗う」は「相手の様子をひそかに見る」時に使用されます。
窺う・覗うをあまり見ない理由
もう一つ、大きな違いがあります。
「伺う」は常用漢字ですが、他の二つはそうではない、という点です。
ですから、「伺う」は、公用文書や新聞などで目にすることもあるのですが、「窺う」「覗う」は新聞などでは、漢字ではなく、「うかがう」とひらがな表記になっているのです。
これが、「窺う」と「覗う」を見慣れない理由です。
まとめ
- 「伺う」は「聞く」「尋ねる」「訪問する」の謙譲語。
- 「窺う」はこっそりのぞくこと。
- 「覗う」は「窺う」と同じ意味だけど、「のぞく」という読みで使われることが多い。
この記事のタイトル「様子を『うかがう』はどれを使う?」について考えましょう。
こっそりと相手の様子を見ているのでしたら、「窺う」か「覗う」です。
「様子をうかがう」という表現は、普通はこちらの意味でしょうね。
もしも、誰かの様子はどのようですかと尋ねる意味で「うかがう」を使うのでしたら、「伺う」になります。
最後に、一文でまとめます。
「へりくだる」ときは「伺う」、「こっそり見る」ときは「窺う」か「覗う」。