日本語には、読みが同じでも意味が異なる漢字語がたくさんあります。
「対象」「対称」「対照」もその代表格。
読みはすべて「たいしょう」ですが、意味も使い方もまったく異なります。
最初の画像は「左右たいしょう」です。
この場合の「たいしょう」は、どの漢字を使うのが正しいでしょうか?
この記事では、それぞれの言葉の意味や例文、英語訳も交えて、違いや使い分けのポイントをわかりやすく解説します。
▼目次(クリックで見出しへジャンプ)
「対象」とは?
意味
①認識や意思などの知的作用が向けられる当のもの。物的・心的・実在的・観念的などあらゆるものが対象となりうる。客体・客観とほぼ同義。
②目標となるもの。
広辞苑(岩波書店 第7版)より
ある行動や意識、感情、調査などが向けられる先の人や物、範囲のことを指します。
「何を目的としているのか」「誰に向けているのか」という焦点やターゲットを表すときに使われます。
- 注目しているもの
- 行動を向ける相手
- 意識や感情の向かう先
などの、「的(まと)」のような存在を意味します。
例文
- 小学生を対象にしたアンケートを実施した。
- 彼の発言は、強い批判の対象となった。
- 恐怖の対象が明確になると、不安は和らぐことがある。
「対称」とは?
意味
互いに対応してつりあっていること。相称。
広辞苑(岩波書店 第7版)より
ある基準を中心にして、左右または上下などが釣り合い、形や配置が均等になっている状態を意味します。
主に数学やデザイン、建築、自然界などで使われ、視覚的なバランスや美しさに関係する言葉です。
左右や上下など、位置・形が釣り合っている(=シンメトリー)という意味。
例文
- この模様は左右対称にデザインされている。
- 羽の模様が対称的で美しい。
- この2つの建物は対称的に配置されている。
「対照」とは?
意味
①他と照らし合わせること。見くらべること。くらべ合わすこと。対比。
②互いに対立する二つの要素がきわだつこと。コントラスト。
広辞苑(岩波書店 第7版)より
2つの物事を並べて比べたときに、違いがはっきりと際立つことを表す言葉です。
見た目や性格、雰囲気、特徴など、はっきりとした違いが印象に残るような対比に使われます。
「比べて、違いがくっきり見える」状態を表す言葉です。
例文
- 昼と夜の雰囲気が対照的だった。
- 兄と弟は対照的な性格だ。
- 隣とは対照的に列が乱れている。
「対象」「対称」「対照」の使い分けポイント
- 対象:向ける先
- 対称:釣り合った形
- 対照:比べて違いがある
「対象」は、ある行動や感情、関心などが向けられる先のものや人を表す
アンケートの対象、支援の対象、攻撃の対象など、“どこに向かっているか”を示すときに使います。
「対称」は、左右や上下などの位置関係が釣り合っていて、形や配置に均整がとれている状態を表す
建築物や図形、模様などで、鏡写しのように見えるときに「左右対称」「対称的な構造」といった形で使われます。
「対照」は、2つの物事を比較したときに、それぞれの違いがはっきりと際立って見えることを表す
色の対照、性格の対照、昼と夜のようなコントラストのある関係を示すときに使われ、「対照的な〜」という形で表現されます。
特に間違えやすいのは「対称」と「対照」
| 意味 | 使われる場面 | |
|---|---|---|
| 対称 | 左右・上下などが釣り合っていること | 図形、模様、建築など |
| 対照 | 違いがくっきりしていること | 性格、雰囲気、色彩など |
どちらも2つのものを比べていますが、意味が全く異なるので要注意です。
たとえば、こんな文があったとします。
このデザインは たいしょうてき だ。
「対称的」の意味で読むなら:
左右や上下が鏡のように揃っていて、バランスが取れているという意味。
「対照的」の意味で読むなら:
色や形が大きく異なっており、違いが目立つという意味。
同じ「たいしょうてき」でも、全く異なった意味になります。
文脈がなければどちらか判断できないこともあるため、文章で使うときは正しい漢字を明記することが大切です。
特にデザインや美術に関する話題では、どちらの意味もよく使われるため、注意が必要です。
英語で表すと?
「対象」の英訳
主な訳語:
- object
感情・行為・研究などの 的(まと)になるものに使われます。 - target
主に意図的に狙う相手や層に使います。 - subject
観察や研究される側、または話題の中心として使います。
例文:
- The object of the study is customer satisfaction.
→ この研究の対象は顧客満足度です。 - Children are the main target of this campaign.
→ このキャンペーンの主な対象は子どもたちです。 - This program is intended for senior citizens as its subject.
→ このプログラムは高齢者を対象としています。
「対称」の英訳
主な訳語:
- symmetry / symmetrical
対称、左右対称、均整、調和など
例文:
- The butterfly’s wings show perfect symmetry.
→ その蝶の羽は、完全な対称性を示している。 - A circle is symmetrical around its center.
→ 円は中心を軸に対称になっている。 - Her face is almost completely symmetrical.
→ 彼女の顔はほぼ完全に左右対称である。
「対照」の英訳
主な訳語:
- contrast
明確な「差異」や「対比」に注目。異なる2つを比較して違いを強調するとき。 - comparison
単に「比べること」「比較」の一般語。類似点や相違点を調べるとき全般。
例文:
- The white walls stand in contrast to the dark furniture.
→ 白い壁が、暗い家具とくっきり対照をなしている。 - The older and younger brothers have contrasting personalities.
→ 兄と弟は対照的な性格だ。 - Let’s do a line-by-line comparison of the original and the translation.
→ 原文と翻訳を一行ずつ対照して見てみましょう。
まとめ
「対象」「対称」「対照」は、漢字の形が似ていて読みも同じですが、それぞれ意味や使い方が異なります。
言葉の違いを意識して使い分けることで、誤解のないスムーズなやりとりができるようになります。
ちなみに、冒頭のクイズの答えは「対称」です。
どれを使えばよいか迷ったときには、ぜひこの記事を参考にしてみてください。