日本語には同じ「あう」と読む言葉が複数あり、漢字によって意味や使い方が異なります。
特に「合う」「会う」「逢う」「遭う」「遇う」は、読みは同じでもニュアンスや使う場面が違います。
今回はそれぞれの意味や使い分け、さらに英訳するときのニュアンスの違いまで、分かりやすく解説します。
▼目次(クリックで見出しへジャンプ)
「合う」とは?
意味
二つ以上の物を集めて一つにする。重ね合わせる。
広辞苑(岩波書店 第7版)より
物事が一致する、調和する、または適していること。
サイズや形、意見などがぴったり一致する場合に使います。
例文
- この服は私によく合う。
- 二人の意見が合う。
- 鍵が錠前に合う。
「会う」「逢う」「遭う」「遇う」とは?
意味
二つ以上が寄り集まり、相手を認める。
《会・逢》たがいに顔を見て相手柄を認識する。顔を合わせる。対面する。
《遭・遇》何かをしている時に、悪い事態が自分の身に起こる。いやな体験をする。遭遇する。
広辞苑(岩波書店 第7版)より
共通の意味
人や物事と顔を合わせる、もしくは何かが起こって接触すること。
会う (一般的な出会い)
人や動物などと顔を合わせる、出会う。中立的で日常的な言葉。
逢う (感情的・ロマンチックな出会い)
恋人や特別な人と会う、心の通う出会い。文学的な表現。
遭う (災難・不運な出来事)
災難や望まない出来事に出くわす。ほぼネガティブ専用。
遇う (思いがけない良い出会い)
思いがけず人や物事に巡り会う。やや古風で、良い意味寄り。
「遇う」の意味の変化
「遇う」という漢字は、古くから日本語や中国語で使われてきましたが、意味のニュアンスに変化があります。
広辞苑では、「遇う」は「遭う」とほぼ同じく、何か悪い事態に出会う、嫌な体験をするという意味が強調されています。
つまり、ネガティブな場面での使い方が記載されています。
しかし、現代での使われ方は少し違います。
現代の日本語では、「遇う」は
- 思いがけず良い人や機会に巡り会う、
- 恵まれた状況に出会う
というポジティブな意味合いで使われることが多くなっています。
なぜ意味が変わったのか?
「遇う」の意味変化には以下のような流れがあったと考えられます。
- 1.古くは中立的な意味
「遇う」は本来、「人や出来事に出会う」という中立的で広い意味を持っていた。
良い場面・悪い場面どちらでも使われていた。 - 2.ネガティブな意味への偏り
時代が進むにつれ、良い出会いは「会う」「逢う」など別の表記に置き換わり、「遇う」は災難や不運など、偶発的で望ましくない事態に使われる例が増えた。 - 3.辞書への反映
このネガティブ寄りの使い方が主だった時期の用法をもとに、広辞苑など一部の辞書では「遇う」を災難・悪い事態の出会いとして定義するようになった。 - 4.現代での変化
近年では、悪い意味では「遭う」が主に使われるようになり、「遇う」は日常語としてはあまり見られなくなった。
使われる場合は「良い出会い」にも用いられることが多く、ポジティブ寄りに戻る傾向も見られる。
ただし、辞書は長い期間にわたる使われ方を踏まえてまとめられるため、最近のニュアンスの変化がすぐに反映されるとは限らない。
※これはあくまで推測的な整理であり、必ずしも唯一の説明ではありません。
例文
会う (一般的な出会い)
- 駅で友達に会う。
- 明日、先生に会う予定だ。
逢う (感情的・ロマンチックな出会い)
- 久しぶりに恋人に逢う。
- 運命の人に逢った気がする。
遭う (災難・不運な出来事)
- 交通事故に遭う。
- 大雨に遭ってびしょぬれになる。
遇う (思いがけない良い出会い)
- 名医に遇うことができた。
- 偉大な師に遇って人生が変わった。
「合う」「会う」「逢う」「遭う」「遇う」の使い分けポイント
| 主な意味 | 感情ニュアンス | 主な場面 | |
|---|---|---|---|
| 合う | 一致・調和・適合 | 中立 | サイズ・形・意見など |
| 会う | 一般的な出会い | 中立 | 人に会う、予定された出会い |
| 逢う | 特別な感情の出会い | ロマンチック | 恋人・運命的な出会い |
| 遭う | 災難に出くわす | ネガティブ | 事故、事件、自然災害 |
| 遇う | 思いがけず良い出会い | ポジティブ寄り | 名医、恩師、好機など |
英語で表すと?
「合う」の英訳
主な訳語:
- match
調和する・ぴったり合う。
見た目や組み合わせの調和を表すとき。 - fit
サイズや形が合う。
服・物理的なサイズがちょうどいいとき。 - suit
似合う・ふさわしい。
人に似合う、雰囲気や性格に合っているとき。
例文:
- This bag matches your shoes.
→ このバッグはあなたの靴に合っている。 - These jeans don’t fit me.
→ このジーンズは私のサイズに合わない。 - This shirt really suits you.
→ このシャツはあなたによく合う。
「fit」と「suit」で意味が変わる
These jeans don’t fit me.
を
These jeans don’t suit me.
に変えると、
サイズが合わない → 似合わない
と言う意味に変わります。
サイズの話なら fit、雰囲気やスタイルの話なら suit を使い分けるのがポイントです。
「会う」の英訳
主な訳語:
- meet
人と初めて会う、あるいは事前に約束して会うとき。 - see
ちょっと会う、様子を確認する、日常的な場面で気軽に会うとき。
例文:
- I will meet my friend at the station.
→ 駅で友達に会う。 - I want to see my grandparents soon.
→ 早く祖父母に会いたい。
「逢う」の英訳
主な訳語:
- fateful meeting、come across fatefully、be destined to meet
運命的な出会い。 - romantic encounter
ロマンチックな出会い
「逢う」の持つドラマチック・情緒的な雰囲気を出すために、「会う」の意味を持つ言葉に、fate(運命), destiny(運命), romantic(ロマンチック) などを組み合わせる。
例文:
- It was fate that we met that night.
→ あの夜に私たちが逢ったのは運命だった。 - I feel like I came across my destiny.
→ 運命に逢ったような気がする。 - They had a romantic encounter in Paris.
→ 彼らはパリでロマンチックな出逢いをした。
「遭う」の英訳
主な訳語:
- encounter
(思いがけず)出くわす、遭遇する - be involved in
(事故や事件など)に巻き込まれる - suffer from
(被害・病気などを)受ける、苦しむ
例文:
- He encountered many difficulties in his journey.
→ 彼は旅で多くの困難に遭った - She was involved in a car accident.
→ 彼女は交通事故に遭った - The town suffered from a major earthquake.
→ その町は大地震に遭って被害を受けた。
「遭う」を英語にするときは、出来事との関わり方の深さによって訳し方が変わります。
- encounter
👉 災害や出来事に「出くわした」「経験した」という中立的な表現。 - be involved in
👉 災害や事故などに「巻き込まれた」というニュアンス。出くわしただけより、被害を受けた印象が強い。 - suffer from
👉 出会った出来事によって「苦しんだ」「被害を受けた」ことを強調するときに使う。
「遇う」の英訳
主な訳語:
- come across
偶然ポジティブな出会いをしたときによく使う。 - encounter
通常は中立的だが、文脈次第でポジティブに「出会う」と表現できる。
例文:
- I came across an old friend at the station.
→ 駅で昔の友人に遇った。 - I came across a wonderful book in the library.
→ 図書館で素晴らしい本に遇った。 - We encountered many kind people during our trip.
→ 旅の間にたくさんの親切な人々に遇った。
まとめ
同じ「あう」でも、漢字によって意味やニュアンスが大きく変わります。
特に「逢う」は文学的・感情的、「遭う」は災難専用、「遇う」はやや古風でポジティブ寄りという違いを覚えておくと便利です。
文章や会話で使い分けることで、より正確で豊かな表現ができます。