みんなで掃除を始めようとしたら、「あ、ちょっと用事があるから」といなくなる人。
面倒な仕事の割り振りの時だけ、「今、とても忙しいので、私には無理です」と逃げる人。
つい「あの人、『確信犯』じゃない?」と言いたくなります。
でも、その使い方は、ちょっと違っています。
▼目次(クリックで見出しへジャンプ)
確信犯の意味・由来
意味
「確信犯」の本来の意味は、「思想的・道徳的・宗教的・政治的な確信にもとづいて行われる犯罪」です。
一般的には間違っていますが、本人は間違っているとは思わないで、正しいと信じてする犯罪です。
分かりやすい例をあげるなら、たとえば、自分の信念で「国や社会はこうあるべき」と考えて、その実現のために罪を犯すこと、また、罪を犯した人のことなどです。
昭和40年代の日本では、学生運動が盛んで、ヘルメットをかぶった学生達が、大学に立てこもったり、角材を持って暴れたりしました。
これは、れっきとした犯罪ですが、学生達は「正しい目的のために行っているのだ」と考えていたと思います。
「違法行為だが、自分の信念としては必要な行為なのだ」という考えが背後にあるのです。
そういう考えでなされる犯罪、または犯罪者を、「確信犯」と言います。
由来
もともとは、ドイツの刑法学者が提唱した法律用語だそうです。
その考え方だと、暴力や殺人などの積極的な犯罪に限らず、国から迫害を受けている人々を助けたり、病気で苦しむ人を安楽死させたりする消極的な法令違反も「確信犯」となります。
日本では、歌舞伎などに、金持ちから奪った金を貧しい人に与える盗人(義賊)が登場しますがこれも、「確信犯」と言えるでしょう。
確信犯の使い方・例文
正しい使い方
法律上は犯罪ですが、自分では、信念を持ってやっているようなことを考えてみましょう。
間違った使い方
最近、「確信犯」を別の意味で使う人が増えてきました。
たとえば、こんな場合です。
会社の終業間際に急な仕事が入って、みんなが残業を始めた時、係長が急に姿を消しました。
次の日、聞いてみると「え? 残業なんてしたの? 知らなかったなあ」と、とぼけました。
そんなとき、誰かがささやきます、「係長、『確信犯』だよね」って。
ここでの「確信犯」は、「悪いことであると分かっていながらする行為・犯罪、又はその行為を行う人」という意味です。
上のように、「犯罪」とまではいかなくても、ちょっとしたサボリ行為・ズルイ行為を行う人にも、「確信犯」という言葉が投げられるようになりました。
でも、こういう使い方は、本来の意味ではなく誤用です。
別の言い方で言うと何?
わざとやる犯罪、という意味では「故意犯」という言葉があります。
「犯罪」とまで言えないような内容のことなら、柔らかく「わざとやっている」「わかってやっている」でも、いいでしょう。
まとめ
- 「確信犯」の本来の意味は、「思想的・道徳的・宗教的・政治的な確信にもとづいて行われる犯罪」のこと
- 「悪いことだと分かっていながらする行為・犯罪、またはその行為を行う人」という意味ではない
「確信犯」は、本来、自分の思想・信条・信念に関係するとても強い言葉です。
その言葉の重みを考えれば、ちょっとしたサボリ行為まで「確信犯」と呼ぶ最近の誤った使い方は、どうなんだろうと思います。