「延ばす」と「伸ばす」。
どちらも「のばす」と読みますが、使い分けを間違えると不自然に感じられることがあります。
基本的には、「延ばす」は時間に関係すること、そして「伸ばす」は物理的な長さに関係することを表します。
では、ここで一つ質問です。
👉「個性を”のばす”」と表現するとき、漢字は「延ばす」と「伸ばす」のどちらを使うのが正しいでしょうか?
▼目次(クリックで見出しへジャンプ)
「延ばす」とは?
意味
時間を長くする。
①長引かせる。久しくする。
②日時を遅らせる。延期する。
広辞苑(岩波書店 第7版)より
「延ばす」は「時間や期限を先に延長する」「予定を遅らせる」といった意味で使います。
主に時間や期間に関することを指します。
例文
- 会議の開始時間を30分延ばす。
- 提出期限を1週間延ばす。
- 出張の日程を延ばすことにした。
「伸ばす」とは?
意味
●空間的に長くひろげる。
- ①物の長さ・距離を長くする。
- ②曲がっているもの、縮んでいるものをまっすぐにする。
- ③面積を大きくする。広げる。
●財産や勢力・能力などを大きくする。ふやす。
広辞苑(岩波書店 第7版)より
「伸ばす」は「物を物理的に長くする」「能力やスキルを発展させる」といった意味で使います。
主に空間的な広がりや能力の向上を指します。
例文
- 髪を肩まで伸ばす。
- 手を伸ばして本を取る。
- 子どもの可能性を伸ばす教育が大切だ。
「延ばす」と「伸ばす」の使い分けポイント
延ばす → 時間・期限・予定など「時間的なもの」を長くする
伸ばす → 髪・手・能力など「物理的・抽象的に広がるもの」を長くする
熟語で考える「延ばす」「伸ばす」
「延ばす」と「伸ばす」は、対象が時間か長さかで使い分けます。
熟語を見ると、その違いがよりはっきり見えてきます。
🕒 延ばす = 時間や予定に関わる「延」
「延」は、時間や予定が後ろにずれる・長く続くイメージを持つ漢字です。
- 延長(えんちょう)
決められた時間や距離をさらに長くすること
(例:試合の延長戦) - 延期(えんき)
予定されていた日や時間を後にずらすこと
(例:イベントの延期) - 延命(えんめい)
寿命や存在期間を長く保つこと
(例:延命治療)
📏 伸ばす = 長さや能力に関わる「伸」
「伸」は、物がぐーっと伸びて広がるイメージを持つ漢字です。
- 伸縮(しんしゅく)
伸びたり縮んだりすること。
(例:ゴムが伸縮する。) - 伸長(しんちょう)
長さや勢いを伸ばすこと。
(例:国の影響力が伸長する。) - 伸展(しんてん)
広がりや勢力を伸ばすこと。
(例:事業が伸展する。)
このように、熟語を意識すると「延ばす=時間」「伸ばす=長さや能力」という区別が自然と身につきます。
📏 延長 = 時間だけでなく距離にも使える
「延長」という熟語は少し特別で、「延」が入っている言葉ですが、時間だけでなく、「公的な決定や制度に基づいて距離を長くする」場合にも使えます。
- 鉄道路線を延長する (工事計画で距離を長くする)
- 高速道路を延長する (区間をさらに伸ばして都市を結ぶ)
あくまでも”公的に”なので、同じ「走る距離を長くする」と言う意味でも、「延長」と「伸ばす」だとニュアンスが変わってきます。
- 走る距離を伸ばす
👉 自分の努力で走れる距離を増やすイメージ。
トレーニングによって体力や能力を高める文脈で使います。
(例:毎日のランニングで走る距離を少しずつ伸ばす) - 走る距離を延長する
👉 大会などで距離を公式に長くするイメージ。
(例:マラソン大会のコースを5km延長する)
このように「延長」は「延ばす」より広い範囲に使える言葉です。
逆に「距離を延ばす」とは言わず、必ず「延長する」と表現します。
英語で表すと?
「延ばす」の英訳
主な訳語:
- postpone
予定を先にずらす(延期する) - extend
期間を延長する
例文:
- We decided to postpone the meeting until next week.
→ 会議を来週まで延ばすことにした。 - The deadline was extended by two days.
→ 締め切りが2日延ばされた。 - She extended her stay in Paris for another week.
→ 彼女はパリでの滞在を1週間延ばした。
「伸ばす」の英訳
主な訳語:
- stretch
体や物を物理的に伸ばす - grow
髪や植物が伸びる - develop
能力や可能性を伸ばす
例文:
- She stretched her arms to grab the book.
→ 彼女は腕を伸ばして本を取った。 - He is growing his hair long.
→ 彼は髪を伸ばしている。 - The program helps students develop their potential.
→ そのプログラムは生徒の可能性を伸ばす助けとなる。
まとめ
「延ばす」と「伸ばす」は、同じ読み方でも使う対象が異なります。
- 延ばす → 時間に関する場合
- 伸ばす → 物理的な長さや能力に関する場合
そして冒頭の問いかけ「個性を”のばす”」の答えは――「伸ばす」です。
個性は時間ではなく能力や特性を広げていくものなので、「伸ばす」が正しい表記となります。