
よく政治家のコメントなどに使われる「苦渋の決断」という慣用句があります。
うっかり「苦汁の決断」と書いてしまうことはありませんか?
「苦汁の決断」は、間違いなのでしょうか。
ここでは、「苦渋」と「苦汁」の意味や使い方の違いについて、調べてみました。
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苦渋の意味・使い方
苦渋とは、文字通り「にがくてしぶいこと」です。
そこから、「思うようにことが進まず、悩み苦しむこと」という意味になりました。
にがくてしぶいものを食べた時のような、苦しく辛そうな顔つきを「苦渋の表情」、「苦渋の色」などと表現します。
例:今回の人事は苦渋の決断だった。
悩み苦しみながら生きたり、決断する場合も苦渋を使います。
苦汁の意味・使い方
苦汁とは、そのまま「にがい汁のこと」です。
そこから、「つらくていやな思いをする」という意味になりました。
苦汁には、他に「にがり」という読み方もあります。
にがりは、海水から食塩を抽出する際に残る苦い液体で、豆乳を固めて豆腐を作る時などに使用します。
単体では、苦みがあって塩辛く、「にがしお」ともいうそうです。
例:苦汁を嘗(な)める思いをしながら、努力を重ねた。
例:勝負に敗れてからは、苦汁の日々を過ごした。
元々が苦い汁なので、「飲む」「嘗める」を使います。
苦渋と苦汁の違いは?
苦渋は表情や状況を形容したり、「味わう」場合に使います。
苦汁は状況を形容したり、「飲まされる」、「嘗める」場合に使います。
ちなみに、飲まされたり嘗めたりするものは、他にもいろいろあります。
例えば、「辛酸」や「煮え湯」です。
辛酸の意味・使い方
辛酸は、「辛酸をなめる」「辛酸を味わう」などのように使います。
意味は「からくてすっぱいこと」です。
そこから「つらく苦しい思いをすること」となります。
苦汁と同じように使いますが、苦汁がただ「にがい汁」なのに対して、辛酸は「からくてすっぱいこと」なので、より多くの苦労を表している、という考え方もあるようです。
煮え湯の意味・使い方
煮え湯は、「煮え湯を飲まされる」などのように使います。
意味は、文字通り「熱湯、熱いお湯」です。
他人のせいで、辛かったり悔しい目にあわされた場合に使います。
ただ、お湯は時間が経てば冷めるものです。
苦汁と比べると、期間の短い場合。
言い争いなどで負けた直後や、恥をかかされた時など、その時は辛かった、悔しかったという時に使います。
まとめ
- 苦渋(にがみ・しぶみ)は味わうもの。
- 苦汁(にがい汁)は飲んだり嘗めるもの。
読み方が同じ「くじゅう」なので、間違った使い方もよく見かけますが、苦渋は「味」、苦汁は「にがい汁」と覚えれば、分かりやすいですね。