「遣」という漢字は、歴史の教科書の「遣唐使」で良く知っています。
あまり日常生活の中で用いる文字ではありませんが、「気遣う」という単語も、たまに見受けられます。
同じ読みでも、「使う」と「遣う」の使い分けはどうなのだろう、という疑問を考えてみたいと思います。
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「使う」の意味・使い方
「使う」は、モノや道具の特性を生かして、目的のために用いることです。
もうひとつ、人を自分の思いのままに動かすときにも用います。
例:この包丁を使うと、刺身が美味しい。
例:仮病を使ってサボってはいけません。
例:新しい上司にこき使われた。
例:立っているものは親でも使え。
「遣う」の意味・使い方
まず、自分の持っているものや部下を相手に送り出すこと、という意味があります。
そこから自分の気持ちや思いが、相手に向かうことを示します。
さらに言葉や文字で自分を表現するとき、お金を出すとき、と意味が広がります。
自分の技術や能力で何かを動かすときも、この漢字を用います。
例:「へ」と「え」の仮名遣いを間違えた。
例:庭掃除をしたら、お小遣いをもらった。
例:相変わらず金遣いが荒い。
例:たいへんなお気遣いをいただき、恐縮です。
例:人形遣いは日本の伝統芸です。
使う・遣うの違いは?
「使」の漢字の本来の意味は「役人」です。
誰のために働いているかというと、大昔は権力者のために働いていたわけです。
自分のために、周りの人や物を利用するのが、「使う」ということです。
使用、駆使、使者、酷使、使い勝手、使い捨て、使いかけ、使い古し
「遣」という漢字は、「肉を届けに道を行く人」表しています。
誰かのために、自分の大切なものを送り届ける、という意味があります。
派遣、部下を遣わす、木遣(や)り
まとめ
- 「使う」は、自分のために、周りのものや人を利用すること。
- 「遣う」は、相手のために、自分の持っているものを差し出すこと。送り出すこと。
- 「使う」は自分のため、「遣う」は人のため、正反対の働きをする文字です。
ただ、この「遣う」、ちょっと注意が必要なのです。
現代では「遣」が動詞として活用するとき、つまり「○○をつかう」という表現には、一般的に「使」を用います。
これは広辞苑にも明記されていますから、市民権を得ていると考えられます。
「遣う」は、「使う」に統一されてしまいつつあるのです。
例えば名詞ならば「気遣い」と、「遣」を用います。
でも、動詞として用いると「気を使う」となるのです。
「金遣い」と「お金を使う」、「言葉遣い」と「言葉を使う」も同様です。
当然ですが「気を遣う」、「言葉を遣う」と用いても間違いではありません。
文字や言葉遣いは時代によって変化するものですから、簡単になっていくのでしょうね。
ただ、本来の意味を知っていると、「これでいいのか」と不安になることはありませんよね。