「姑息」はよく「あいつは姑息な手を使ってくる」などといった使い方をしますよね。
この「姑息」は例文では、「卑怯な」という意味で使っていますが、これは正しい使い方なのでしょうか。
今回は、「姑息」の本当の意味について調べてみました。
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「姑息」の意味
広辞苑(岩波書店 第7版)で意味を調べてみました。
①一時の間に合わせ。その場逃れ。
②俗に、卑怯なさま。
「姑」には「しばらく。一時的。」、「息」には「やすむ。やめる。」と言う意味があり、組み合わせることで「姑息」は「一時休む」、転じて、「一時的に間に合わせる」と言う意味になります。
「姑息」の本来の意味は「一時の間に合わせ」であり、「卑怯」ではないのです。
②に「卑怯」と載っていますが、「俗に(=世間一般的に)」と前置きすることで、本来の意味とは違うことを表しています。
他の辞書も見てみましょう。
根本的に解決するのではなく、一時の間に合わせにする・こと。
〔現代では誤って「卑怯(ひきょう)である」という意味に使われることが多い〕
スーパー大辞林(3.0:2018年)
根本的な解決をせず、一時の間に合わせにすること。場当たり的。
「姑息」を卑怯の意に使うのは、本来は誤り。
明鏡国語辞典(第2版:2010年)
どちらの辞書にも「卑怯」は誤った使い方となっています。
敢えて載せるくらい、間違った意味が浸透していると言うことですね。
「姑息」についての「国語に関する世論調査」
「姑息」の意味の理解度を実際の数字でも見ていきます。
令和3年度(2021年度)の「国語に関する世論調査」で、「姑息」の意味を尋ねたところ、結果は以下のようになりました。
回答 | 令和3年度(%) |
---|---|
①「一時しのぎ」という意味 | 17.4 |
②「ひきょうな」という意味 | 73.9 |
①と②の両方 | 5.9 |
①と②とは全く別の意味 | 1.7 |
無回答 | 1.1 |
本来の意味である「①「一時しのぎ」という意味」を誤った意味である「②「ひきょうな」という意味」が上回ってます。
また、年代別の結果でも、全年代で本来の意味より誤った意味を選択した方の割合が大きく上回っています。
回答の選択肢に少し違いはありますが、平成15年度(2003年度)、平成22年度(2010年度)にも同様の調査行われました。
いづれの調査でも、全年代で本来の意味より誤った意味を選択した方の割合が上回る結果となりました。
実は、広辞苑第6版(2008年)では、②の「卑怯」と言う意味の記載はなく、第7版(2018年)で新たに追加されてます。
長年、間違った使われ方がされていると言う上記のような調査結果を受けて、追記されたと推測されます。
ちなみに
英語では?
「姑息」を英語で表すと、
- makeshift (その場しのぎをすること、間に合わせの)
- stopgap (一時[当座・その場]しのぎの策)
- palliative (一時的によくする、一時的に和らげる)
いろいろな辞書を調べると、この3つがよく出てきました。
「palliative」は医療的な事に使われることが多いようです。
例:
- makeshift camp (簡易[一時的な・間に合わせの]宿泊所)
- stopgap arrangement (暫定的取り決め)
- palliative care (苦痛緩和治療、緩和ケア)
- palliative effect (〔病気などに対する〕緩和効果)
「卑怯」の意味
①心が弱く物事に恐れること。勇気のないこと。臆病。
②心だてのいやしいこと。卑劣。
広辞苑(第7版)
卑怯には「一時しのぎ」という意味は全く入っていません。
ここからも、「姑息」=「卑怯」ではないと言うことがわかります。
まとめ
- 「姑息」≠「卑怯」
- 間違った意味が浸透していることを受けて、辞書に「卑怯と言う意味で使用するのは間違い」と追記された。
今回は、「姑息」の意味についてご紹介しました。