「敷居が高い」という言葉は「ハードルが高い」という意味なのでしょうか。
敷居とは、家の門や玄関、部屋の出入り口などの引き戸や障子、ふすまなどを開け閉めする為に床に設置される溝のついた横木のことです。
これがそのまま「高い」という意味に考えれば確かに「ハードルが高い」という意味につながるのは分かりますが、本当にこの意味なのでしょうか。
今回は、「敷居が高い」の本当の意味と使い方をご紹介していこうと思います。
「敷居が高い」の本当の意味と使い方
明治期以降の文学作品を調べると、「敷居が高い」は不義理や面目の立たないことがあって、その人の家に行きにくい、という意味で用いられることが多かったようです。
例:喧嘩をしてからか、A君の家に行くのは敷居が高くなってしまった。
ここでは、喧嘩をしてしまっているために、仲の良かったA君の家に行きにくくなってしまった状況を、「敷居が高い」という言葉で表現しています。
また、国語辞典にも以下のように同様の意味だけを記載しています。
『大辞林 第3版』(平成18年・三省堂)
「不義理・不面目なことなどがあって,その人の家に行きにくい。」
『広辞苑 第6版』(平成21年・岩波書店)
「不義理または面目ないことなどがあって,その人の家に行きにくい。敷居がまたげない。」
「敷居が高い」についての「国語に関する世論調査」
平成20年度の「国語に関する世論調査」で、「あそこは敷居が高い。」という例文を挙げて「敷居が高い」の意味を尋ねたところ、結果は以下のようになりました。
回答 | 平成20年度(%) |
①相手に不義理などをしてしまい、行きにくい | 42.1 |
②高級すぎたり、上品すぎたりして、入りにくい | 45.6 |
①と②の両方 | 10.1 |
①と②とは全く別の意味 | 0.3 |
わからない | 1.9 |
グラフは年代別の結果を示したものです。
これを見ると明らかな通り、40代を境に50代以上では本来の意味である「相手に不義理などをしてしまい、行きにくい」、30代以下では「高級過ぎたり、上品過ぎたりして、入りにくい」を選んだ人が多くなっています。
現在は、本来の意味から「不義理や面目の立たないことをしている」という前提となる理由の部分が欠け、その家に入りにくい、という結果だけを残して用いられるようにその使い方が変わってきている状況が分かります。
まとめ
「敷居が高い」という言葉は「ハードルが高い」という意味と全く一緒ではないということがわかりましたね。
何か後ろめたさや行きづらさがあるという意味を含んだ言葉でした。
このように、「ハードルが高い」などの言葉に置き換えて多用しているために「敷居が高い」という言葉も同様の意味を持つと勘違いしてしまっていると考えられます。
また、今回ご紹介した広辞苑の7版(平成30年)では、「高級すぎるから入りづらい」という意味が追加されています。
しかし、同年発行の小学館の国語辞典には、「高級すぎて…」という使い方は間違いと書いてあります。
言葉の意味が時代によって変化しているという良い例だと思います。
変化途中のためか、辞典によって正しいと書いてあったり誤りと書いてあったりするのですね。
ほかにもこのような言葉があるのではないかと思います。
今回は、「敷居が高い」の意味と使い方についてご紹介しました。