「彼は、にやけた男だ」という表現から、どんな男性を想像しますか?
「にやにやと笑っている男」と答える人が多いと思いますが、実は、違います。
どのような男性か、一言でいうと、「オネエ」?
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にやけるの意味・由来
「にやける」は、「にやけ(若気)」を動詞化した語で、漢字で書いたら、「若気る」となります。
「若気」は鎌倉・室町時代では男色(男性の同性愛)の相手のことでした。
そのころ、男色は不道徳なことではなく、身分の高い人が相手として少年を側に置くこともあったのです。
その相手の少年が「若気」です。
ここから、「若気る」が「男が女のようになまめかしい様子をする」ことを表すようになりました。
にやけるの使い方・例文
正しい使い方
男が、なよなよしているという意味です。
女性に使うのは、本来の使い方ではありません。
例:化粧するなんて、にやけた男だな。
間違った使い方
「にやける」の音から連想して「にやにやする」、つまり「声を出さずに、薄笑いを浮かべる」と思う人が多いのですが、間違いです。
また、本来は男性にしか使わない言葉ですから、「なまめかしい」という意味であっても、女性に使うのは誤りです。
× 彼は漫画を読みながら、にやけている。
別の言葉で言い換えると?
正しい意味の「にやける」に近い言葉は「なよなよする」「女っぽい」「軟弱」などでしょうか。
現代語の「チャラチャラする」も、近い言葉かもしれません。
やにさがる
ところで、「やにさがる」(漢字では「脂下がる」)という言葉をご存じでしょうか。
江戸時代の言葉で、「男性が得意になってにやにやする。気取る。」という意味です。
たばこを吸うとき、キセルの雁首(たばこを詰めるところ)を上にあげて反り返った姿勢になると、ヤニが吸い口の方に下がってきます。(だから「ヤニ下がる」)
キセルの雁首を上げた姿が、いかにもカッコをつけた様子に見えたので、「やにさがる」は、「気取る」「得意気になる」という意味で使われるようになりました。
男性の様子を、批判的に表した言葉という点で、「にやける」と「やにさがる」は、類似点がありますね。
まとめ
- 「にやける」とは、男がなよなよとしている様子。
- にやにやと薄笑いを浮かべることではない。
「にやける」も、意味を間違って覚えている人が多い言葉です。
文化庁の調査(平成23年度)では、「にやける」の意味を、正解の「なよなよとしている」と答えた人は14.7%で、誤りの「薄笑いを浮かべている」と答えた人が76.5%でした。
小学生の時の担任の先生のことを思い出しました。
その先生は、生徒を実によく(ハンカチを忘れたくらいの小さなことで)叱りました。
叱られると、小学生は照れ隠しにニヤニヤしてしまいます。
すると先生は、「にやけるな!」と怒鳴るのでした。
あの先生も、きっと「にやける」を間違って覚えていたのですね。