プレゼンの席などで、「この件の説明は、時間の都合上、割愛させていただきます」のような発言を聞いたことがあると思います。
では、「割愛(かつあい)する」とは、どういうこと?
A、重要ではないので、省略する。
B、重要なことだが、仕方なく省略する。
A,Bのどちらでしょうか?
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割愛するの意味・由来
割愛の意味は「惜しいと思っているものを、やむを得ず捨てたり省略したりすること」です。
もともとは、仏教の用語で、「愛着の気持ちを断ち切ること」を表す言葉です。
「愛」着あるものを、仕方なく「割」る、という気持ちを表しているから「割」「愛」で、愛着あるもの、惜しいものを手放すという意味になるのです。
割愛するの使い方・例文
正しい使い方
「惜しいと思うものを、省略したり捨てたりすること」が本来の意味です。
たとえ表面上に表れなかったとしても、「本当は、捨てたくない」という気持ちが裏にあるのです。
例:全部掲載したかったが、紙面の都合上、あの作品は割愛した。
間違った使い方
「惜しいと思いながら」という気持ちを含まないで、単に「省略する」または「不必要だから省略する」という意味で使う人が多いのですが、これは誤用です。
× これは、あまり重要ではないので、割愛します。
なぜ、「割愛=省略」だと思ってしまうのでしょうか。
おそらく、「時間の関係上、割愛させていただきます」のように、「本当は削りたくないけれど」の気持ちが出ていない表現を、「割愛」の意味を知らない人が聞いて、「割愛=省略」だと思い込んでしまったのではないでしょうか。
文字でみれば「愛」の字から、「削りたくない」という気持ちが感じ取れるのでしょうが、耳で聞いた「カツアイ」からは、それは伝わりにくいということもあるかもしれません。
別の言葉で言い換えると?
「惜しみながら」の意味を出せるのは「やむを得ず省く」「省略せざるを得ない」「残念ながら省略する」などです。
後で書くように、誤用の意味で覚えている人が多いので、できれば言い換えるか、「残念ですが」という言葉を付け加えるようにする方がよいと思います。
まとめ
- 「割愛する」とは、惜しいと思っていてもやむを得ず省略すること
- 不必要だから省略することではない
文化庁の調査(平成23年度)で、割愛の意味を尋ねたら、誤用の「不必要なものを切り捨てる」と答えた人が65%と、多数を占めました。
ということは、話し手が「割愛します」に、「大切だけど、やむを得ず省く」という気持ちをこめたつもりでも、聞いた人の多くは「重要でないから省くんだな」と受け取ってしまうのですね。
自分の真意とは全く逆の意味に解釈されてしまう可能性がありますから、うまく言い換えるなどして、賢く発言する必要がありそうです。