「ITテクノロジー」「チゲ鍋」「サハラ砂漠」――こうした言葉、日常的に使っていませんか?
実はこれらは、意味が重なっている「重言(じゅうげん)」と呼ばれる表現です。
重言というと「頭痛が痛い」などが有名ですが、カタカナ語や外来語に由来する重言も意外と多く存在します。
この記事では、カタカナ重言(外来語・略語などを含む意味の重複表現)を分類別に紹介しながら、なぜ重言になるのかをわかりやすく解説します。
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カタカナ重言の分類と例
1. 略語や頭字語と意味がかぶる重言
略語の中にすでに含まれている意味を、さらに補ってしまうタイプの重言です。
| 表現 | 略 | 重言の理由 |
|---|---|---|
| ITテクノロジー IT技術 |
IT = Information Technology | テクノロジー、技術が重複 (Technology = 技術) |
| ATMマシン | ATM = Automatic Teller Machine | マシンが重複 |
| PIN番号 | PIN = Personal Identification Number | 番号が重複 (Number = 番号) |
| GPSシステム | GPS = Global Positioning System | システムが重複 |
| LEDライト | LED = Light Emitting Diode | ライトが重複 |
| JIS規格 | JIS = Japanese Industrial Standards | 規格が重複 (Standards = 規格) |
| DVDディスク | DVD = Digital Versatile Disk | ディスクが重複 |
| BMI指数 | BMI = Body Mass Index | 指数が重複 (Index = 指数) |
2. 外来語と和語の意味が重なる重言
カタカナ語の意味を、日本語で繰り返してしまう表現です。
| 表現 | 重言の理由 |
|---|---|
| チゲ鍋 | チゲ = 韓国語で「鍋料理」 |
| サルサソース | サルサ = スペイン語で「ソース」 |
| マグカップ | マグ = 英語でカップの意味 |
| クーポン券 | クーポン = フランス語で券の意味 |
| フラダンス | フラ = ハワイ語でダンス |
| ガードマン | ガード = 英語で警備員の意味 |
| ベストワン | best = 英語で最上級の意味なので1つしかない |
| ハングル文字 | グル = 朝鮮語で文字の意味 |
| 排気ガス | ガス = 英語で気体の意味 |
| イメージ映像 | イメージ = 英語で映像の意味 |
| ソース元 | ソース = 英語で情報源なので、「元」と意味が重複 |
| 3人トリオ | トリオ = イタリア語で3人組、3重奏の意味 |
| 白湯(パイタン)スープ | 湯 = 中国語でスープの意味 |
| クリスマス・イブの夜 | イブ = 前夜の意味 |
3. 地名を訳すと意味が重なる重言
地名の一部が、日本語に訳すと同じ意味になってしまう表現です。
| 表現 | 場所 | 重言の理由 | 現地名 |
|---|---|---|---|
| サハラ砂漠 | アフリカ大陸北部 | サハラ = アラビア語で「砂漠」 | アッ=サフラー・アル=クブラー |
| ゴビ砂漠 | 中国、モンゴル | ゴビ = モンゴル語で「砂漠」 | ゴヴィ チョル |
| ナイル川 | アフリカ東部 | ナイル = エジプト語で「川」 | ナフル・アン=ニール |
| メナム川 ※現在は「チャオプラヤー川」と呼ばれている |
タイ | メナム = タイ語で「川」 | メーナーム・チャオプラヤー |
📝 ちょっと豆知識
かつて「メナム川」と呼ばれていたチャオプラヤー川
かつて日本では、タイの「チャオプラヤー川」のことを「メナム川」と呼ぶことが一般的でした。
しかしこれは、タイ語に対する誤解に基づくものです。
タイ語では「メナム・チャオプラヤー」と呼ばれている「チャオプラヤー川」ですが、タイ語では被修飾語が前に来る語順で、「メナム」が「川」という意味、「チャオプラヤー」がその川の名前となります。
しかし、「メナム」を川の名前と誤解した結果、「メナム川」という表現が広まってしまったのです。
この呼び方は不適切とされ、現在では地図や公的資料でも「チャオプラヤー川」が正式名称として用いられています。
まとめ
カタカナ語や外来語を使った表現の中には、知らず知らずのうちに意味が重複している「重言」が多くあります。
ただし、それらの多くは日常的に定着しているため、必ずしも「間違い」ではありません。
とはいえ、フォーマルな文書や論文、報道などでは、できるだけ簡潔で正確な表現を選ぶことが好ましいでしょう。
たとえば「ITテクノロジー」は「IT」または「テクノロジー」のいずれかにする、などの工夫が求められます。
「重言=全部ダメ」と思い込まず、文脈や目的に応じて言葉を選ぶことが大切です。