よく使うし耳にもする。
だけど、わかっているようで実はわかっていない。
それが「上げる・揚げる・挙げる」の使い分けです。
漢字そのものは小学生レベルだから、間違うと恥ずかしいかも。
ちょっと考えてみましょう。
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「上げる」の意味・使い方
「上げる」の意味は、かなり幅広いものです。
それぞれの意味と合わせて例文を参照すると、わかりやすいと思います。
1.体やものの場所や位置を、高い方へ移動すること。
例:ブラインドを上げると、海が見える。
例:満塁のチャンスなのに、凡フライを上げてしまった。
2.さらに高い地位に進めること。
例:課長を、今度の人事異動で部長に上げるらしい。
3.物の程度や値段を高くすること。
例:お湯の温度を上げないと、ぬるくて入れない。
例:車のスビートを上げて逃げ切った。
例:野菜の値段が上がってしまった。
4.順序が前方へ移ること。
例:とうとう、打席が3番に上がった。
5.本来は、神様や目上の人に物をささげること。
現在は、人や動物に何かを与える意味の丁寧語として使うのが、一般的。
例:読み終わった本を、弟に上げる。
例:犬に餌を上げる時間だ。
6.前より優れた状態になること。
例:前年度の二倍は、利益を上げるようにいわれた。
例:かなりゴルフの腕を上げましたね。
7.物事が終了する、または限度を示すこと。
例:昼過ぎなのに、もう現場から上がってきた。
例:30年間、勤め上げて退社します。
例:徹底的に調べ上げてから、報告します。
例:予算内で上がるように考えましょう。
「揚げる」の意味・使い方
一番目は、なんといっても天ぷらやフライなどの調理をする、という意味ですね。
物を高い方へ持っていく、という「上げる」と同じ用法もあります。
さらに気分や声の調子を高める、という意味でも使います。
例:国旗を揚げる役目をいただいた。(「上げるも可)
例:大凧を揚げるのに絶好の風が吹いてきた。(「上げる」でも可)
例:魚を陸に揚げるときは、手早くしないといけない。(「上げる」でも可)
例:船から荷物を揚げるのは、波が高いと難しい。(「上げる」も可)
例:もっとトーンを揚げて歌ってみてください。(「上げる」も可)
例:気分が揚がってきた。(「上がる」でも可)
「挙げる」の意味・使い方
まず体や物を高く掲げて、意思を示す、という意味があります。
人や物事を目立たせる、という意味も持ちます。
また、実行するという意味でも使います。
皆で足並みをそろえるという意味も持ちます。
犯人を捕まえる、という意味もありますね。
例:今度の委員候補に、あの人の名前が挙がっている。
例:具体例を挙げて説明してください。
例:結婚式を挙げる日取りが、決まりました。
例:国を挙げて、解決を願っています。
例:真犯人を挙げるまでは、休めません。
上げる・揚げる・挙げるの違いは?
こうやってみると、どの漢字も「上へ持っていく」という意味が含まれています。
ですから、「上げる」でも「揚げる」でも、どっちでもいい場合がかなりあります。
ということは、「揚げる」あるいは「挙げる」でなくてはダメな場合を、しっかりと押さえておけばいい、ということになりますね。
「上」の成り立ちと用法をみてみましょう。
大地の線より上、を示します。
下、中、と合わせると、意味がよく伝わる感じですね。
用例:
上昇、上空、上階、上級生、上等、上質、上品、下剋上、献上、壇上
「揚」の成り立ちと用法をみてみましょう。
太陽が大空を行くように、人の手で何かを高く掲げたり降ろしたりすること。
用例:
揚げ物、揚げたて、抑揚、鷹揚、国旗掲揚、高揚、凧揚げ
物の状態や精神の置き所をコントロールする様子です。
でも「上げる」と違うのは、単にモノの移動ではない、道具や特別な方法が必要な場合のようですね。
「挙」の成り立ちと用法をみてみましょう。
たくさんの手で、もち上げることを示しています。
用例:
挙手、挙式、列挙、選挙、推挙、挙兵、挙国一致、検挙、軽挙妄動
しっかりした意思や意見をもち、目に見える状態にしたり実行したりすることを表す漢字ですね。
まとめ
「上げる」と「揚げる」は、ものを上に持っていくという意味では、どちらも使えます。
ただ、調理の「揚げる」だけは、これしか使えません。
また「挙げる」と「上げる」は、意味が異なりますから、一緒にはできませんね。
たとえば「手を上げる」は、腕の移動です。
でも「手を挙げる」は、そのことで意思を示しますので、区別しなくてはいけないでしょう。
犯人からすれば『手を挙げろ』でしょうが、こちらからしたら、仕方なく『手を上げる』ことになります。
では「笑い声をあげる」は、どっちでしょうか。
自然発生的な行為なら「上げる」、意図的なら「挙げる」となります。
悲鳴や怒鳴り声はついつい自然にでるものですから、「上げる」でしょう。
全体の関係から判断しなくてはなりませんね。
最後になりましたが、表題の「成果をあげる」はどの漢字が妥当でしょうか。
人が認めるほどの具体的な結果を出すことですから、「成果を挙げる」で、いいですよね。
いやあ、こんなに意味があって交錯すると、お手上げ状態ですね。