
厳しい冬の寒さも終わり、春の到来を感じる頃には、暖かで気持ちよい晴れの日が続きますね。
「ああ、小春日和だなあ」とつい口に出したくなりますが…
違うのです。
「小春日和」は「春」の気候ではないのです!
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小春日和の意味は?
「小春日和」には、「春」の字が入っていますが、春ではなく、秋の終わりから冬の始まりのころの晴れて暖かな気候のことです。
(ちなみに「日和」とは晴れていること、天気のいいことを意味します。
天候・空模様という意味で使われることもあります。)
晩秋から初冬にかけて、ぽかぽかっと、春のように暖かで穏やかな気候になることがあります。
落ち葉のささやきを聞きながら、ひなたぼっこをしたくなるような、そんな日です。
それを、「小春日和」と呼んでいます。
俳句では冬の季語になっています。
下の俳句では、小春日和は玉(宝石)にたとえられています。
(意味:まるで天からさずかった宝石のようにすばらしい、暖かく心穏やかな一日を与えられたなあ)
小春日和っていつ?
「小春」というのは、旧暦10月の異名です。
(「小春月」とも言います)
旧暦というのは、明治の初期まで日本で使われていた太陰暦(月の動きを元につくられた暦=カレンダー)です。
太陽暦(今の暦・新暦)と太陰暦(昔の暦・旧暦)には、ごくおおざっぱに言って、1ヶ月ほどの時間のズレがあります。
たとえば「五月雨(さみだれ)」という言葉の意味は、「梅雨(ばいう・つゆ)」です。
「梅雨」は、現在の感覚では6月頃の気候ですが、旧暦では5月頃のものであるから、「六月雨」ではなく「五月雨」と表記されているわけです。
太陽暦(新暦)と太陰暦(旧暦)には、そのようなズレがあると思ってください。
それと同様に、小春月が旧暦10月といっても、今の暦なら、11月頃の晩秋から初冬の頃に当たります。
本格的な冬が到来するその前の、穏やかな暖かい日々が小春日和です。
春の小春日和は何て言うのが正解?
春の晴れた日のことを表す言葉には「春日和(はるびより)」があります。
「春の日和(はるのひより)」とも言い、春のよく晴れた穏やかな日のことです。
また、「春日(はるひ・しゅんじつ)」という言葉もあり、「春の日・春の陽光・春の一日」のことを指します。
春の暖かな日は「春日和」か「春日」と言うのが正しいのです。
まとめ
- 「小春日和」とは、晩秋から初冬にかけての、春に似た穏やかで暖かい気候のこと。
- 春の晴れた日のことは「春日和」「春日」という。
ところで「麦の秋」、または「麦秋」(ばくしゅう)という言葉をご存じですか?
これは「秋」の字が入っていても、季節は「秋」ではありません。
麦の実る頃、という意味で、夏の季語なのです。
本当に、日本語って、繊細な季節感を漂わせた美しい言葉の宝庫ですね。