夕暮れの街、男が別れを切り出そうとする場面。
男「なあ…」
女「なあに?」
男「オレたち、もう、潮時かなあ…」
女「うん、そうね。ワタシもそう思っていたのよ。嬉しい!」
男「?」
女「もう潮時よね、結婚の!!」
さて、「潮時」って、どういう意味なのでしょうか?
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潮時の意味は?
「潮時」とは、「物事を行うのにもっとも適した時期」のことです。
本来の意味は、海の潮の満ち引きによって、船を出して行くのにちょうどよい潮の具合になることです。
昔の船はエンジンなどはなく、風力や人力で進ませていたのですから、潮の具合は、とても大事だったでしょう。
漁師さんや船頭さんは、潮を見て最も適した状況になったら船を出していました。
そこから転じて「物事を行うのにもっとも良い時期」を示す言葉として、「潮時」が用いられるようになりました。
例:父の説教はなかなか終わりそうになかった。が、近所のおじさんが碁を打ちませんかと誘いにやってきたので、逃げる潮時と思って抜け出してきた。
潮時の間違った使い方
現在では、「潮時」というと、「物事の引き際・終わりの時期」だと思っている人が増えました。
特に、スポーツ選手の引退時のインタビューなどで、つぎのような発言をされているのを見たことがあるでしょう。
「もう、気力と体力がついていかない。潮時だと思いました。」
「潮時=引退の時」という意味での発言であれば、これは誤った使い方です。
恋愛や仕事などでも、「もう潮時」「そろそろ潮時」という言い方だけで、「終わりが近づいた」という意味を表していることもありますが、これも同様に、誤っています。
× 父から譲り受けた商店だが、もう廃業してしまおうか。ここらが潮時だ。
今、「潮時」という言葉は、「引退」や「別れ」などのタイミングについて使われることが多いようです。
そのせいで、「潮時」自体にマイナスのイメージを感じる人が多くなったのかもしれません。
潮時の正しい使い方
「潮時」は「物事の引き際、終わり」ではなく、「物事をするのにちょうどよい時」「好機」という意味です。
何かを始めることも、終えることも、両方で使えます。
それが「引退」であることも、もちろん、あります。
ですから、「何をするのに」ちょうどいい時期か、を書いておけば、前向きなことにも、悲しいことにも、「潮時」を使うのは、問題はありません。
例:あの野球選手は、そろそろ、引退の潮時だ。
例:この商店も、もう廃業する潮時かもしれない。
恋愛でも、結婚や婚約にちょうど良い時期という意味で「潮時」を使うことができますし、別れに際しても使うことができます。
例:二人の間に、気持ちのすれ違いが生まれてきた。別れを考える潮時なのだろうか。
まとめ
- 「潮時」は、物事を行うのにちょうど良い時期のこと。
- 「終わりの時期」に限定されるものではない。
でも、「潮時」=「終わり」と、考える人の気持ちは分かります。
思うに、「何かを終わりにする」のは判断が難しく、寂しいもの。
「潮時」という言葉の力を借りて、自分自身を納得させようとしているのかも知れません。