分かったようで分からない表現というのがあります。
たとえばテレビ番組のコメンテータがする「このまま、なし崩し的に〇〇になってしまっては、いけませんね」なんて、発言。
あの「なし崩し」って、一体どういう意味で使われているのでしょうか。
何かが崩れてグズグズになっちゃうこと?
じわじわと、なくなっちゃうってこと?
何ですか? なし崩しって。
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なし崩しの意味・語源
意味
「なし崩し」には、物事を少しずつ片づけていくこと、徐々に変えて始末すること、などの意味があります。
語源
元々は借金を少しずつ返済することを意味しましした。
なし崩しの「なし」は、漢字では「済し」で「返済」の意味だったのです。
そこから転じて、物事を徐々に片づけていくことを「なし崩し」と言うようになりました。
なし崩しの使い方・例文
正しい使い方
「徐々に」「少しずつ」という意味で使います。
例:このまま、事業計画をなし崩しに進めていこう。
徐々に進んでいる勢いに乗って、物事が進んでいく様子がうかがえます。
間違った使い方
本来は、悪い意味合いではなかった「なし崩し」ですが、今は、「あいまいにする」「うやむやにする」「流れにまかせる」という意味でも使われるようになりました。
「なし」「崩し」という語句のイメージのせいか「雰囲気に飲まれて、うやむやなままに、あいまいになる」というネガティブな意味合いで使われていますが、これは誤用です。
別の言葉で言うと何?
本来の意味ならば「少しずつ」「徐々に」と言い換えられます。
誤用の言い換えならば「成り行きで」「うやむやのうちに」などでしょう。
間違った意味で使われることも
新聞の見出しで「なし崩し」という表現を目にすることがあります。
「オスプレイ なし崩し全国運用へ」
「関電の原発 なし崩し延命に反対だ」
「自衛隊新任務 原則をなし崩しにするな」
こういう見出しは「徐々に・少しずつ」と取ればいいのか、「成り行きにまかせてウヤムヤに」と思えばいいのか、よくわかりません。
記事をじっくり読んで、深く考えれば分かるのかもしれませんが、でも、悲しいかな、私のような一般人には、そんな能力も時間もないのです。
そう考えると「なし崩し」は、「確信犯」「姑息」などと同様に、使う側と受け取る側の間で誤解の生じやすい言葉ですね。
まとめ
- 「なし崩し」の本来の意味は「物事を少しずつ片づけていくこと」
- 「あいまいに、うやむやにすること」は誤り
私も「なし崩し」の正しい意味を知らないで、ネガティブな言葉だと思っていました。
しかし正しい意味を知っていたとしても、相手がどういう意味で使っているかは、判断に苦しみます。
この言葉自体が、あいまいでウヤムヤな表現になってしまった感がありますね。