友達とパスタを食べに行きました。
「私、辛党なのよ」と言って、友人はナポリタンにタバスコを大量に振りかけていました。
でも、それ違います。
「辛党」とは、ピリピリと辛いものが好きな人のことではありません。
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辛党・甘党の意味・語源
現在の多くの辞書では、辛党と甘党について、次のように説明しています。
甘党とは、「酒よりも、甘いものが好きな人」
甘い物と酒が対比されています。
しかし、古くは「辛党とは、塩辛い物を好む人」という使い方がされていたのです。
つまり昔は「辛党=塩辛い物好き」でした。
酒を好む人は、つまみなどに塩辛い物を食べる傾向にありますから、やがて、酒好きな人のことを辛党と言うようになりました。
「辛党=塩辛い物や、酒が好きな人」に変化したのです。
ところが、ある時期から、「塩辛い物が好きな人」の部分がとりこぼされて、辞書には「辛党=酒が好きな人」とだけ記述されるようになったそうです。(神永曉さんの研究による)
結局「辛党=酒好き」の意味だけが残り、辞書に掲載されない「辛党=塩辛い物好き」という使い方は、誤用と言われるようになります。
現在、甘党と辛党は対義語として「甘党=酒よりも甘い物が好きな人」「辛党=甘い物より酒が好きな人」と説明されています。
辛党・甘党の使い方・例文
正しい使い方
甘党は、単に「甘い物好き」というだけでなく、「酒よりも好き」の内容を含んでいるのです。
辛党は、辞書に従って「酒が好き」という意味で使うのが良いでしょう。
例:彼女は辛党で、お酒を飲みながらテレビを見るのが趣味らしい。
間違った使い方
現在、甘党・辛党を、酒と無関係に、単に甘い物好き、辛い物好きとして使う人が多くなりましたが、誤用ですので注意しましょう。
辛党を、昔は使われていた「塩辛い物好き」の意味で使うと、今は誤用と判断されてしまいますし、「唐辛子などのピリピリした食べ物が好き」という意味でを使うのは、そもそも誤りです。
× 何にでも醤油とソースをかける辛党の人は、塩分過多になりがちですから注意しましょう。
× 僕は辛党で、この店の超激辛カレーが大好きなんだ。
辛い物を好きな人のことは何と言えばいい?
適当な言葉はあまり無いような気がします。
1980年代に起こった激辛ブームで、唐辛子のような刺激ある辛さを好む人が増えましたが、そういう刺激ある味を好む人を表す言葉が見つからなかったので、「辛党」が流用されるようになったという説があるくらいです。
素直に「辛い物好き」「激辛好き」でいいのではないでしょうか。
まとめ
- 甘党とは、菓子などの甘いものが好きな人。
- 辛党とは、菓子より酒が好きな人。
- 単に「甘い物が好き」「辛い物が好き」という意味ではない。
お酒好きを表す言葉として、「左党(さとう)」というものがあります。
江戸時代の職人は、槌(つち)を持つ右手を槌手(つちて)、ノミを持つ左手をノミ手と呼んでいました。
その「ノミ手」という言葉から「飲み手」をイメージして、酒飲みを「左党(さとう)」と言うようになったようです。
最後に、「無理問答」(ダジャレです)。
左党(さとう・砂糖)なのに、辛党とは、これいかに?
塩辛い海に入っても、海女(あま・甘)と呼ぶがごとし。
ハイ、お後がよろしいようで。