あまり聞き覚えがない「すべからく」という言葉ですが、皆さんはその意味と使い方を知っていますでしょうか。
頻繁に使われるような言葉ではないので、意味を知らないという方も少なくないかもしれません。
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「すべからく」の意味
広辞苑(岩波書店 第7版)で意味を調べてみました。
(「為すべかり」のク語法。漢文訓読から生じた語。多くの場合、下の「べし」と呼応する。)なすべきこととして。当然。
「すべからく」は文末に「~べし」や「~べきだ」等をつけて、「すべからく~すべし」=「当然のこととして~すべき」と言う意味で用いられます。
漢文の読み下しで使われてきた、古い言い回しの言葉です。
漢字では「須く」と書きます。
「すべからく」の誤用
「すべからく」と響きが似ている為か、「全て」と言う意味で誤用しているケースがあります。
以下、スーパー大辞林3.0からの抜粋です。
〔漢文訓読に由来する語。「すべくあらく(すべきであることの意)」の約。下に「べし」が来ることが多い〕ぜひともしなければならないという意を表す。当然。
〔近年「参加ランナーはすべからく完走した」などと、「すべて」の意で用いるた場合があるが、誤り〕
辞書にも「誤り」と記載されるくらい間違った使い方が浸透しているようです。
また、平成22年度、 令和2年度の「国語に関する世論調査」では、以下のような結果になりました。
回答 | 令和2年度(%) | 平成22年度(%) |
---|---|---|
①「すべて、皆」という意味 | 32.1 | 38.5 |
②「当然、是非とも」という意味 | 54.8 | 41.2 |
①と②の両方 | 9.1 | 5.2 |
①と②とは全く別の意味 | 1.8 | 3.1 |
無回答 | 2.2 | – |
分からない | – | 11.9 |
どちらの年度も本来の意味である②を選んだ方が多いですが、間違った意味の①を選んでいる方も3割超いる結果となりました。
また、年代別の調査結果でも、
のように、間違った意味の①を選んだ方はどの年代でも一定数いる結果となりました。
ただ、平成22年度では間違った意味の①を選んだ方が本来の意味の②を選んだ方を上回っている年代があったり、①と②を選んだ方の割合の差が少ない年代が多いですが、令和2年度では殆どの年代で5割以上の方が本来の意味の②を選んでいる結果を見ると、年を追うごとに本来の意味が盛り返してきているのかもしれません。
ちなみに
例文は?
- 運動後はすべからく水分を取るべし。
- 運転手はすべからく交通ルールを順守すべし。
すべからく順調にことが運んだ。
(「全て」の意味で使っているので、誤用となる)
英語では?
「当然のこととして~すべき」と言う意味で使われる英文としては、
- should ~
- ought to ~
がよく使われます。
先程の例文を例に英訳すると、
- They should keep themselves hydrated after sports.
- Drivers ought to obey traffic rules.
と言う感じになります。
成り立ちは?
「する、行う」を意味するサ変動詞「す」と、推量助動詞「べし」の補助活用「べかり」のついた「すべかり」がク語法によって「すべからく」になったと言われています。
※ク語法・・・言葉の最後に「~く」を付けて名詞にする語法。
まとめ
- 「すべからく~すべし」=「当然のこととして~すべき」
- 「全て」と言う意味で使われることがあるが、これは誤り。
今回は「すべからく」についてご紹介しました。