「テストで、Aさんは98点、Bさんは100点。上には上が……」の続きに来る言葉は、「いる」でしょうか、それとも「ある」でしょうか。
人間について言っているから「いる」だと思いませんか?
ところが「上には上がいる」は誤りで、正しい表現は「上には上がある」なのです。
なぜ「ある」なのか調べてみました。
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上には上がいる?ある?
「上には上がいる」と「上には上がある」を、辞書で引いてみましょう。
辞書には「上には上がある」は掲載されていますが、「上には上がいる」は掲載されていません。
つまりは「ある」が正しく、「いる」は誤用なのです。
× 上には上がいる。
この表現は、より優れた人間がいる、という状況で使われることが多いですね。
ですから、「優れた人がいる」の延長線上の表現として、「上には上がいる」の使用が広がったのだと思われます。
しかし『広辞苑』には、「これが最上だと思っていても、必ずそれ以上の行為や状態があることにいう」と説明されています。
広辞苑の考え方だと、「上だ」「下だ」と比べられているのは「人」そのものではなく、「行為」や「状態」なのです。
自分より能力を持った人が「いる」のではなく、自分より上の才能、能力が「ある」という考え方です。
人間そのものに順位をつけて、「あの人の方が上にいる」と言っているわけではなく、「よりすばらしい能力や状態がある」ということなので、人間を指しているように思える場合でも「上には上がある」を使うのが正しいのです。
上には上があるの意味・使い方
「上には上がある」は、「最も優れていると思っていても、それよりも優れているものがある」ということです。
自分のうぬぼれやおごりを戒める時に、よく使われる言葉です。
例:彼より優れた選手がいるなんて、まったく上には上があるものだ。
下には下がいる・あるって言うの?
「上には上がある」の対義語のように見える「下には下がある」という言葉は、ありません。
少なくとも、辞書には載っていません。
「片思い」から「両思い」を連想するように、「上には上が」から「下には下が」という言葉を思いついて使っているのではないでしょうか。
別の言葉で言い換えるなら
「上を見れば方図がない」(方図とは、際限・限りということ)・「上を見ればきりがない」などの表現で言い換えられます。
ただし、これらは「欲張るな、現状に満足せよ」という雰囲気があり、「うぬぼれるな」の意味を含む「上には上がある」とは、微妙に違っているような気もします。
まとめ
- 「上には上がある」は、「最も優れていると思っていても、より一層優れているものがある」こと
- 上には上が「いる」ではなく、上には上が「ある」が正しい
「上には上がある」が、自分の油断や高ぶりを戒めるために使われるだけならいいのですが、誰かと比較して、どっちが上だ下だ、と優越感を持ったり劣等感を抱いたりする結果になっていれば、それは、あまり良いことではないと思います。
他の人との比較は、人を幸福にはしません。
SMAPは歌っていましたね、「それなのに僕ら人間は、どうしてこうも比べたがる?」と。
難しいことかもしれませんが、人と比較してその結果に一喜一憂することは、止めたいものです。